ご案内

双眼鏡で偵察していた船長が、1つの氷河目指して船を直進させた。 その頃、一行は寒さと疲れで船室で休んでいた。
私は以前の体験から、そろそろラッコが現れるのではないか、と期待して甲板から海面を見張っていた。 予想通りちらほらとラッコが仰向けに浮かぶ姿が見え始めた。 前方を見ると、なんとラッコの大群が、横に長く続いているではないか。 こんな情景を見るのは初めてだ。

私は船室に降りていき、「ラッコの大群だ」と叫ぶやいなや、みんながカメラを持って甲板に急ぐ。 「わっ、すごい」「かわいい−つ」「感激だあ」などと賑やかなこと。 やがて浮氷群に突っ込み、船が停止。 アザラシが氷の上に寝そべったり、泳ぎ回ったりしている。 そのとき、眼前で氷河が大音をたてて崩落した。 ものすごい迫力だ。
恐怖感が感激にかわって、拍手がわき起こった。

船長の説明で、その氷河はハリマン氷河だとわかる。 船長の作戦は見事に効を奏した。 船員が網を手に、崩れて浮かぶ氷塊を拾い上げる。 コックが素早く砕いて、ワイングラスに入れると、赤ワインが注ぎ込まれ、数十人の乗客全員にグラスが配られた。 船長の発声で「カンパイ」。
氷河崩落の瞬間を眼前に見られた幸運に感謝。 掲げたグラス越しに青空と氷河が映える。 ワインは船長からのプレゼントだ。 なんというイキなはからいだろう。
グラスのなかで、「ピシッ、ピシッ」と、軽快な音がはじける。 氷河の氷ならではのこと。
氷にまじった気泡に圧力が加わっているから、溶けた瞬間に空気がはじける音なのだ。

湾を大きく迂回して、入江に向かうと、断崖絶壁から見事な滝が2つ並んで流れ落ちていた。
その周囲の岩壁には無数の海鳥が群れている。 まもなくウイッティア港に着き、7時間のクルーズは終わった。
もちろん逆のコースもある。 ウイッティアからポーテイジまでは道路がなく、アラスカ鉄道の路線だけだから、カートレインにバスごと乗る。
これも楽しい。 約40分でポーテイジに着き、そのままバスでポーテイジ湖畔に行く。

大きな氷山がいくつも岸に流れついていて、まるで北極海のようだ。 ポーテイジ氷河の観測所記録によると、1940年からポーテイジ氷河の後退が始まり、湖ができ始めて1965年には湖の長さが3.2キロにまでなった。

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